長崎大学水産学部の学習教育目標は次のとおりです。
A.
海洋あるいは海洋に関連する産業等に接する機会を通じ、それらの現状、問題点、あるいは社会の要求について多面的に考える能力
1.
社会についてさまざまな視点から考えられる能力を養う
2.
海洋および船舶に慣れ親しみ、船内での団体生活を体験し、協調性・寛容性を習得する
3.
卒業研究テーマに関連した水産科学の現状と問題点に関して学び、その研究の社会における位置づけと意義を理解し、それを説明できるようになる
B.
水産技術をはじめとする科学技術が社会および自然に及ぼす影響・効果を理解し、これらの技術を将来扱う者としての責任を自覚できる能力
1.
食糧あるいは環境についての知識を身につけ、人間との関係について理解する
2.
水産技術の歴史や現状に関する知識を身につけ、技術開発がもたらす光と影について考える能力を身につける
3.
卒業研究テーマやそれに関連する科学技術が、社会および自然に及ぼす影響や効果を理解し、それを説明できるようになる
C.
数学及び自然科学に関する基礎的知識を習得し、それらを専門分野に応用できる能力
1.
数学的に物事を考える能力を養う
2.
物理・化学・生物のいずれかの基礎的素養を習得する
D.
水産生物資源に関する基礎、持続生産に関する基礎、水系-地球環境に関する基礎、水産物の利用に関する基礎的知識とそれらを応用できる能力
1.
各コースでの学習内容や研究室での研究の目的と内容を知る
2.
海洋生産管理・海洋生物科学・海洋応用生物化学・海洋環境科学、それぞれに関する概要を理解する
3.
漁業・海洋観測等の基礎的実習を行い、海洋でのデータ収集方法を身につける
4.
水産技術の歴史について理解する
E.
次にあげる4つの水産学の専門基礎分野の中から一つを選択し、当該分野の専門技術に関する基礎的知識とそれらを応用できる能力
1.
(E-1)海洋生産管理に関連する専門基礎(海洋生物資源管理の基礎理論・解析手法・技術,有用資源の生産,加工,流通など)
2.
(E-2)海洋生物科学に関連する専門基礎(海洋生物資源の維持管理,生態系保全,遺伝子資源の保護,水産生物の生産技術,資源培養技術など)
3.
(E-3)海洋応用生物化学に関連する専門基礎(水産食品加工・栄養・衛生,機能性物質の利用,未利用資源の開発など)
4.
(E-4)海洋環境科学に関連する専門基礎(海洋環境評価・保全,生物生産など)
F.
水産業を取り巻く社会の要求に基づいた調査・研究を遂行するための計画を企画する基礎能力
1.
図書館のガイダンスを通して、情報収集の方法を習得し、さらに計画を企画する基礎能力を身につける
2.
実験・実習・卒業研究の目的を達成するために必要な情報を収集し、課題を解決するための計画を企画し実行する基礎能力を身につける
G.
日本語による論理的な記述力、口頭発表能力、討論などのコミュニケーション能力
1.
日本語による論理的な記述ができるようになる
2.
論理的かつ説得力のある発表を行えるようになる
3.
論理的に討議ができるようになる
H.
外国語を用いたコミュニケーション基礎能力
1.
英語を利用した基本的な読み書き、会話の能力を習得する
2.
英語の専門文献を読むことができるようになる
3.
漁英語以外の外国語に関して親しむ
I.
実験目的を的確に把握し、自主的、継続的に実験を遂行することができるようになる
1.
各コースでの学習内容や研究室での研究の目的と内容を知る
2.
卒業研究の進行に沿って、自主的、継続的に情報を収集し、論文を読むなどの行為ができるようになる
J.
計画に基づいて調査・研究を実行するとともに、その結果をまとめる能力
1.
図書館や情報処理センターを利用し、調査結果をまとめる能力を身につける
2.
計画に基づいて実験を実施し、適当な手法によって実験結果の解析を行えるようになる
3.
卒業研究を計画的に実施し、研究結果を分かり易い文章としてまとめられるようになる
K.
チームで仕事をするための能力
1.
実験・実習で与えられた課題について、複数の学生で話しあい、共同で計画実行する基礎能力を身につける
2.
他の学生や研究者と強調して卒業研究を遂行する能力を身につける
それぞれの学習・教育目標の内容について次に説明します。
目標(A),(B)
目標(A),(B)には、本学部の伝統と卒業生の活躍分野が反映されています。 本学部は、長崎の近隣の海を中心とした海洋生物資源を利用するため、基礎科学と技術開発に関する教育・研究を行い、社会に貢献してきました。その結果、1953年以来、今日まで5975名が卒業し、多数の卒業生が水産科学に直接・間接的に 関連した公的機関、教育機関、業界(漁業、製造、小売・卸売、金融・保険、運輸・通信、マスコミ、情報サービス等)の多様な分野で従事しています。 このような伝統と地域性を反映させ、学生の皆さんが、近隣海域とそれを取り巻く産業に接して学ぶ機会を持ち、水産科学への関心を増大してもらうため、目標(A)、(B)を設定しています。 また、実験・実習・演習・卒業研究を通じて、海そのものや海に関連する産業等に接し、人間活動が海洋環境に与える影響や、海洋産業をはじめとする技術の現状とその問題点を多面的に考える能力を修得することが求められます。 これは将来、科学技術の開発や利用に直接・間接的に従事する者として、大切な素養となることです。
目標(C)~(G),(I)~(K)
水産科学を取り巻く社会の要求は刻々と変化し、それに応じて本学部でも教育内容の改変を行ってきました。 海洋の生物資源を食品として利用するのみならず、医薬品や工業用材料などへ利用を念頭においた教育を実現したことや、海洋の環境変化や汚染問題および海洋の資源変動と海洋環境の変動との関わりに注目した教育コース(海洋環境科学コース)を確立したことを、具体例として挙げることができます。 本学部では、社会の要望に応えるため、数学、物理、生物、化学および地学を基礎とした海洋に関連する応用科学を展開しています。学生の皆さんは、共通的な基礎知識と能力の修得を実現すると共に(目標C、D)、4つの履修コースから一つを選択して専門基礎能力を修養することが目標となります(目標E)。 海洋にはまだ我々の手の届かない領域が多く残され、未知の生物や化学物質、物理的現象が数多くあります。海は無限の可能性と謎に満ちています。一方、地球的規模で海洋資源の枯渇も危惧されています。これらは、次代を担う学生の皆さんにとって、勉学意欲をかき立てる魅力であると同時に、責務の対象ともなる事柄です。 長崎の周辺海域を中心に、これらの課題と問題に直面し、他の海域と比較しながら、これを解決していくための基礎的能力(目標F、I、J、K)と、その成果を効果的に発信する能力の素養(目標G)を修得することを目標として下さい。
目標(H)
日本最西端に位置する本学では、その歴史と特色を生かし、アジア地域を中心とした国際交流活動を活発に実施しています。その中でも、水産学部では、全学的にみても際だって多数の留学生・外国人研究者が滞在して教育研究活動を行っています。 本学部では、全学教育での外国語教育ばかりでなく、専門教育で米国人教師による英語会話教育を実現しています。卒業研究時に言語・文化の異なる留学生と接しながら学習する機会を持つことも可能です。国際的なコミュニケーション能力の修養を目標にしてください。